WITHOUT SOUNDS

グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

Portishead / Half day closing (Portishead収録)

Portishead /Half day closing
別に大した扱いを受けている曲じゃない。むしろ割かし影も薄い方の曲だと思う。が、自分としてはこの曲にはとても感じるものがあるので今回は一つ記事を打とうと思う。 



終わりを告げる叫びが電子となりカオスへと消えていく怪曲
曲はGlory boxのような印象的で質素なベースラインと、不協和音気味の小さなフィードバックのような音から始まり、その最小限の音数の中からベスは霞がかった声でこう歌い出す。

In the days, the golden days, When everybody knew what they wanted, It ain't here today
(そんな時代、皆自分が何を欲しがっているか分かっていたような輝かしい時代、そんなの今はもうないのよ)


ポーティスヘッドお得意のパターンだが、この曲はいつもと雰囲気が違う。基本的にクールな姿勢を崩さない彼ら、何やら今回はどことなく情熱(感情)的な装いだ。印象的なその呟きと共にドラムが加わり、曲は昔ながらのヒットソングのようなベタな盛り上がりを見せながら一回目のコーラスに入っていく。ここのフレーズがこの曲の肝
Dreams and belief have gone, Time, life itself goes on.
(夢も信念もなくなってしまった  時は、人生は続いていくけれど)


輝かしいあの時…夢も、そして信念までも失ってしまった自分。なのに何も終わらずに続いていく人生。そんな心境をベスはぼやけた音質で歌いあげる。曲はそのまま不穏な音色の不吉なフレーズを挟みながらスムーズに二番に繋がっていき、たっぷり時間をとった引きからさらに音数を増やして全く希望もないまま歪に盛り上がっていく。そして開始からわずか二分半で、曲は最後のコーラスに向かう。この後がこの曲最大の聴き所だ。

確かめるように三度目の「時は、人生は続いていくけれど」を歌い終えたベスは何とも言えぬ後味で声を発し電気処理で歪まされたその声は高音に伸びて行くと同時に他の音と混ざり合い、果たして元々人間の声だったのか電子音だったのか分からない所まで分解されてどこかに散っていく
ここの展開に毎回背筋がゾクッとくる
何か恐ろしいものに触れてしまったような、そんな感覚を味わうのだ。

クライマックスが過ぎても、曲はまだ終わらない。エンディングを予感させつつも、曲はその解決を放棄したまま後は風のような音を微かに流すだけ。終わりもはっきりしないままアルバムは次の曲に続いていく…。


自然な曲だ。古典的なフォーマットにのっとったクラシックスタイルの歌唱曲。そこに、意味があるのかも分からないホラー映画のような電子ノイズ、悪意を感じる音響処理を加えて行くだけでここまでどす黒い曲に出来るのかと震える。底地が自然体なだけに、そのマイナス具合は圧倒的。就寝時、うつらうつらとしてるときに流れると、ふとどこかへ連れ行かれるような、そんな一曲。

アルバムページへ戻る
関連記事