WITHOUT SOUNDS

グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

10曲で振り返る浅井健一のソロキャリア、その魅力(2/2)

前回に引き続いてやっていきます。残り5曲、現在に至るまでの浅井ワールドその一端に触れましょう。前回のリンクです↓
10曲で振り返る浅井健一のソロキャリア、その魅力(1/2)



6. カミソリソング / SHERBETS
2001年10月発表。この人の音楽センスに驚かされるのに、ワンフレーズから引きずりだす音世界、その引き出しの多さがあります。この曲はまさにそれ。コード感の薄いベースリフを網にして、徐々に異常な空間を引きずり出していく様はギタリストとしてのベンジーその真骨頂…。ですが歌詞は。うん……。サウンドの爆発力で許してしまいますが、作詩は大分怪しいのが多くなってきてます。全体的にBJCではありえなかったバンドサウンドで、そういう意味でもシャーベッツの代表曲の一つなのでは。最高にオルタナ

「昨日俺は牧場の夢を見た 
あまりに美しい女が俺にこう言ったよ
メリーさんの羊を歌ってくれれば
どこまででもアンタについていくわと」

カミソリソング
半年でシングル3つ出しやがった

Release:2001
前曲と同じくアルバム収録はないので、モノならマキシ。何がおかしいって、この曲含めて既に前6ヶ月でカップリング含め8曲発表してるのに、それら全て未収録でフルアルバム全曲新録とか…。この時期はほんとうに暴走してたんじゃないでしょうか。



7.シルベット / JUDE
2002年発表。その足は止まらず、この年は新たにスリーピースバンド「JUDE」(ユダ)を結成。SHERBETSでの精力的な活動に加え、AJICOが去年なわけですから、ホント何してるんだって感じです。後期BJCはそんなに堅苦しかったんだろうか……。
前回の「みず」で取り上げた「純粋」と関連して、「少年性」といった要素も彼の外せない要素かと思います。この曲のサビはキーが高いです。やたらに高い。その結果いつも以上に力を振り絞った声が響き渡り、それが歌詞と相まって絶妙な青春感というか、少年のような心持ち、何かエバーグリーンな風景を連想させます。ファンとしてはそう感じる。ただそれを「ノド声乙」「聴き苦しい」と言われると、「確かになぁ」と返すしかない。まぁそうしたツッコミ所は置いといて、このちょっと可愛らしいポップな曲調、メロに耳を向けてほしい。良い曲なんですよ。アウトロでの力強いギターストロークが眩しいです。この時すでに38歳なわけですが、それで一切の疑いなくこの曲調鳴らせるのも凄い
「別にいいよ君にあげる 俺のすべて 
それって一体何なのか わからないけれどね
愛してるなんて言うな そんな言葉 
ただの言葉なのさ そんなに強くないぜ」
Charming Bloody Tuesday
AL2枚同時発売だった(これもう分かんねぇな)

Release:2002
この年は6月からシングル2枚アルバム2枚(!?)という怒涛のリリースを続けました。ここらへんの曲の、そしてライブでの喉声高音連発が今に凄い響いてしまってるよな……いやそれによってあの絶妙に枯れた味わいを手にしたと思えば


※探したらMADになってしまった…
8. ロバの馬車 / JUDE
2004年発表。引き続きJUDEから。浅井健一はこの年で丁度40歳になりましたが、少年性みたいなものを持ちつつ、大人(中年ともいう)になって少し枯れ、余裕やダーティさをまとっていきます。「ロバの馬車」はいつも通り無愛想な始まり方を見せますが、サビで一気に開けた景色を見せるのが感動的な甘めのバラード。ベタなメロと、照れ隠しと本音が交互に顔を出すような歌詞が、彼の年の取り方を思いつつジーンとくる名曲です。割とBJC含めてのキャリア屈指のバラードと、個人的には。

「何もないがニコニコして 君の笑顔が見れればいい」

ZHIVAGO
謎ファンシー(普通にかわいい)

Release:2004
JUDEはBJCほど暴れてはなく、SHERBETSほど自由すぎず、バランスのとれた、渋く大人なロックサウンドを鳴らしていたように思います。それゆえちょっと地味だったりするんですが、ベテランバンドの旨味(?)がある。JUDE時代の個人的オススメは「Highway Child」。



9. 危険すぎる / 浅井健一
2006年発表。05年はシャーベッツ、06年はJUDEのベストをリリース、から初の「浅井健一」名義ということで、またひとつ節目を越えたのかな、という感じです。この人を語るなら、「セクシーさ」(いざ文字におこすと変な感じ)も忘れてはいけない。タイトルからしてもうアレなこの曲は、フラメンコ進行を取り入れた、インパクトあるキラーチューン。ベースもギターも声もエロいエロい。その表現力は多くが納得してくれる気がします。ちなみにサビで喘いでいるのはかの林檎嬢(この役割でこの人コールできるのベンジーだけやろ……)。「罪と罰」に続く夢のコラボでした。ベース照井利幸、ドラムス茂木欣一、コーラス椎名林檎て意味不明ですぜ。

「コカコーラ買ってくるけど 他に何かいる物でもある?
だったらついでにマルボロとトランプとチョコレート
あとスケッチブック 笑顔を描きたい」

初見で何言ってんだコイツと思われた方は完全に正しく。どんな風に歌われてるのか想像してみてほしい。これをカッコ良く歌えてしまうのがこの人の卑怯さというか惚れた弱みというか。自分がこの人のソロにも興味を持つキッカケになった一曲でもあり、思い入れが強いです。ダサくもカッコよくもちょっと笑ってしまうようなそんな魅力。ソロでの代表曲でしょう。
Johnny Hell
クールなジャケ

Release:2006
「Johnny hell」は全体を通して非常にポップで聞きやすく、随所にらしさも伺える入魂作。初登場9位、トップ10入りは実はBJC、AJICO以外では初で。キャッチーなシングルといい、良い流れでした。



10曲目に至る前に、2006年から時を進めていきます。2007年なんですが、ついにこの人は浅井健一名義で2枚、SHERBETSで1枚、1年でフルアルバム3枚という奇行行動に出ます。が、個人的に、なかなかどうしてこれらがイマイチで……。単体で良い曲はあるけど、アルバム単位で聴けなくなってきた。とにかく多作すぎる、リリーススパン短すぎる、手癖曲目立ちすぎじゃない?ということで、「もうちょっと練ってくれ」との思いが募ってたのです。照井さんと組み話題になったPONTIACSもそこまでピンとこず。ちょっと離れてしまってました。なんかダラッとして聞こえてしまって。

しかし2011年の「FREE」(快作!)にて自分の中で復活というか、また一周まわってリフレッシュしてくれた感覚を覚えました。今が全盛期!とまではやっぱりいきませんが、最近の彼はまた良い感じに戻った気がします。んで、最後の曲に至るわけです。




10. 紙飛行機
2014年発表。ということで目下最新曲を10曲目、締めとしたいのです。ジャスト50歳。この曲には彼の今までが色々詰まっています。楽曲は綺麗なピアノの旋律から入りますが、案の定、この人の声と音が加わった瞬間に空間は歪む。一気に混沌としたその世界で歌われる、「僕たちの未来は  未来は紙飛行機 できるだけ遠くへ  遠くへ飛べるように」。グレープジュースで書いたような例の瞳で、彼は今をどう見つめているのか。悲しんでいるのか、希望を見出しているのか、怒っているのか。分からない。歌の中で、聴き手はただ彼に真っ直ぐ見つめられます。

「丘の上から駆け下りてくる神父さんへ
はじめまして  ご機嫌いかがですか?
僕らがやってるこの社会はどうですか  救われますか
このままいったらまたあの地獄のような戦争が始まるのでしょうか」

ポエトリーリーディングなんてカッコイイ装いでなく、ボソっと投げかけられるこの部分の静かな迫力は尋常じゃない。ロックンロールに回帰したり、カレー屋はじめたり、渋くきめていた最近の浅井健一ですが、やはりこうした切れ味あってこそベンジーじゃないかと。歳とともに増した表現力ふくめ、惚れ直す会心の一曲でした。
「Nancy」
チョコっぽい

Release:2014
1年以上をかけて制作された、収録アルバムNANCYもなかなかの良作で。まだまだこれからを期待させます。



ということで浅井健一のソロキャリア、代表曲or自分の好きなもので10曲振り返ってみました。何度も書いてますが、この人の多作っぷりは半端じゃないです。自分もまだまだ、とても全作は聴けていません。なのでとりあえず、ここらへんが代表曲、オススメできるんじゃないかな?という気持ちでまとめてみました。他にも良い曲は沢山あって…。書ききれないのです。とにかくこの記事を見て、何か一つアルバム聴いてみよう、持ってないのもう一つくらい聴いてみるかとなれば本望です。

これからも、まぁそんなに生き急がずゆっくり時間をかけながら(←重要)、浅井健一らしい独特の楽曲を届けてほしいな、と思います。末長く!

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浅井健一、新アルバム「Nancy」に込めた“光”を語る - 音楽ナタリー
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