WITHOUT SOUNDS

グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

WONK / Sphere (2016) 感想 - まだひとが足りない

(11.10 書き起こし)

サイケなアートワークでキマってる。抜き取ったのかこれから入れるのか

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Introduction #2 -Sphere-
02. savior
03. Real Love (feat. JUA & Shun Ishiwaka)
04. RdNet (feat. Patriq Moody)
05. Emly (feat. Onetwenty)
06. h.v.c
07. Glory (feat. Tweli G)
08. 1914
09. Minton (feat. Kohei Ando)
10. Over
11. DOF (feat. Dian from Kandytown)

Total length : 36:32


「HIATUS KAIYOTEをはじめとして、世界で巻き起こるフューチャーソウル旋風。ついに日本にも、その波を牽引するバンドが現れました。彼らの名は「WONK」。ジャズやソウル、ヒップホップの要素をクロスオーバーに取り入れ、独自の音楽を生み出している、話題沸騰中のエクスペリメンタル・ソウルバンドです。」
日本のR&Bシーンを牽引する、世界水準バンド『WONK』


あまり自分と仲良くなれなそうな人なら「本格派」なんて呼び方をするかもしれない。Robert Glasper Experimentが浮かんでくるジャズピアノ、D'angeloのズレのあるビート、J・ディラ、サンプリング感覚と生音の同居。そんなかなり強い参照句で謳われる、"エクスペリメンタル・ソウル・バンド"(勿論キャッチコピー)WONKのファーストアルバムを聴いた。そのサウンドは確かに近年のフューチャーソウルに並走するもので、この音楽性がインディからDIYで出てくるのに門外漢ながらびびってしまう。
WONK、yahyel、TAMTAM、ZA FEEDO―海外シーンの活況と共鳴する、ハイブリッドで新しい感性を持つ日本人バンドの台頭 - Mikiki
今回はこの辺りの記事が参考になった。

インディーロックばかり聴いている自分の中にも昨年ケンドリック・ラマーのトラックにハマった流れがあって、そこからロバート・グラスパーやテラス・マーティンのアルバムを聴いてみたけれど、どれも「最高品質のBGM」という感想が限界、どんな音楽要素も綺麗にカドをとって完全に消化したような音には「とても心地よい」くらいの感覚しか得られなかった。一方で、フューチャーソウルの旗手、ハイエスタス・カイヨーテの『Choose Your Weapon』(傑作!)の滅茶苦茶な配合には心底やられたりした。

そんな耳でWONKを聴いていると、日本語のラップが突如展開をねじ切っていくような強引さ(エクスペリメンタルの部分か)、バンドの演奏力とゲストミュージシャンがフリーセッションで異物をぶつけあうような試みに惹かれる。個性を折衷して「ひとつ」を目指すんじゃなくて、混ざらないまま向かい合ってその場に立ち会う。そっちの方が個人的には好きだ。
人脈が面白さにつながるのは本当にジャズ、ヒップホップあたりの強み・面白さというか、ロックバンドの弱点だと改めて感じる(あんまりないし、大体面白くはならない…「トム・ヨークがvo参加」の期待値の低さ、ってそれは違う)。でも、きっとまだWONKにはひとが足りない。それはもちろん今作のゲストが弱いという意味じゃなくて、これからの更なる可能性の広がりの話だ。


リードトラックなどが投稿されていないのでトレイラー映像を(SoundCloudの視聴の方がいいかも。MVはあげないのだろうか)。ゲストドラマー石若駿のプレイが強烈な「Real Love」や、「RdNet」あたりのスリリングさ、ヒップホップとジャズセッションの同時並走を歌がいなすような「h.v.c」が良い。「Emly」はNxWorriesの新譜に収録されていた「Get Bigger」にも近いが、そこにゲストのトランペットを乗せる向きの違いがまた面白い。全体的に底に引っ込んだようなベース音(ヒップホップのイメージ)もハマっている。グラスパー方面の実力派揃いのゲストボーカルと比較すると明らかにメロディラインや声は弱いが、この演奏からサンプリングやラップ以外の解を探してあくまで「歌もの」に縛るアプローチ、かつ(声質などの問題もあるのだろうが)テンプレなスイートソウルメロとも一線を画した作曲。このあたりの姿勢も同じような理由で魅力的だ。


悪い癖というか、新しいバンドを見かけると何となく「東京の」、「京都の」、「福岡市博多区から~」とかつけたくなるが、音楽活動の中で知り合ったメンバーで結成され、多彩なゲストを呼び込み、サイトデザインからライブ活動まで日本を飛び越えて海外を視野に入れているこのバンドには、そんな位置づけ方はまったく時代遅れなんだと思う。今はまだ東京が活動拠点だけれども、「From Nakameguro To Everywhere」の"From"すら、もう世代感覚としては必要ないのだ。今この場所からどこまでも広がっていって、レーベルや国の境もなく集まった人たちが一枚のレコードを作り上げる。そんな現代的な絵巻きをこういうバンドの近くから見られるのかもしれない。誰も外の世界がそばにある時代、やっぱりそんな光景の方が良い。
Rating : 73 / 100 ★★★★


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