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WITHOUT SOUNDS

グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

The War on Drugs / A Deeper Understanding (2017) 感想 -インディの枠を超えて


今作の雰囲気を端的に表したアートワーク。器材に囲まれたスタジオルームに男ひとり佇む……(こっち見んな感)

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Up All Night 6:23
02. Pain 5:30
03. Holding On 5:50
04. Strangest Thing 6:41
05. Knocked Down 3:59
06. Nothing to Find 6:10
07. Thinking of a Place 11:10
08. In Chains 7:20
09. Clean Living 6:28
10. You Don't Have to Go 6:42

Total length : 66:13

『Lost in the Dream』のブレイクから約3年、(一部界隈で)という暗黙の枕詞も不要に正しく待望の新作となったThe War on Drugs(以下TWOD)『A Deeper Understanding』。まずは先行曲の「Pain」を聴いてほしい。
 

Captured Tracksを漁ったようなイントロと「Shoegaze」や「Dream Pop」を通過した音響感覚、そこに乗るのは「80s好きなボブ・ディラン」みたいなAdam Granduciel(以下アダム)の歌唱で、メロディラインは往年の時代を顧みる「Americana」を彷彿とさせながら、間奏ではインディが避けてきた泣きのギターソロをワイルドに聴かせ情感を煽る……
ここまで早口

前作同様この盛り感、60s~00sまで様々な年代の王道裏道を組み合わせた楽曲陣は、一貫して堂々たる"勝ちパターン"を掲げる盤石の仕上がりだ。その盤石さは生真面目なほどだが、時折見せる、ニューウェーブやシンセ・ポップなんて言葉も浮かぶほどキャッチーで明るいアレンジには微笑ましい魅力も漂っている(「Holding On」のハイウェイドライビング・ギターポップ・カントリーみたいな感じとか最高)。何より、音色や音響という意味でなく、楽曲のポップな懐の広さが良い。(前述のように)個人の嗜好を組み合わせたインディ的な創作姿勢、しかし楽曲からはインディスケールを越えた訴求力が感じられるその塩梅。The Nationalなどに代表される、こうした特異なインディバンド勢――TWODはそこに加わったんだと思うし、だからこそ今作はUS#10、UK#3という成功をおさめたのだ。ここは後述しよう。

ディスクユニオンの商品レビューから、本作へのアダムの発言を引いてみる。

「これは貴方がその目を開いて、自分の人生を見つめる記録の物語なんだ -- 貴方しか知らない、貴方を貴方たらしめているものを手放さないでねってことを言いたかったんだ。」

しかし歌詞は相変わらずの堂々巡りっぷりで、この時世に「内に籠ったIとYouセンチメンタル」に留まる様は批判があってもしょうがない。とはいえ一曲目の「I'm stepping out into the world, I'm stepping out into the light」僕は世界へ足を踏み出している、光へ足を踏み出している)という一節が、内に閉じきっていた前作からの前進、今作における彼の所信表明だろう。そこに織り重なっていく力強いビートが最初のハイライトで、その足取りにはブレイクを果たした自信、心境が伺える。


Shawn Everettワークス
何より舌をまくのは打ち込みと生音が混ざり合った音像、音色の豊かさだ。この音が今作を懐古主義にしていない。その仕掛け人はShawn Everett(以下ショーン)。本作同様Engineering, Mixingを担当した、Alabama Shakesの『Sound & Color』において見事グラミー最優秀エンジニア賞に輝いた人物である。
アジカン後藤正文に訊く、グラミー4部門を制覇したアラバマ・シェイクス(Alabama Shakes)の凄さ、そこから浮かび上がる2016年の風。前編 | The Sign Magazine
その後もWarpaint、Perfume Genius(2017年傑作のひとつ『No Shape』もこの人!)、Broken Social Scene、Grizzly Bear……と錚々たるメンツに名を連ねてきた彼の手腕はここでも際立っている。特に「Pain」のアウトロ、どんどんエフェクターを踏んで展開していく多重ギターソロの合奏スケールは圧巻だ。本作はアダムによる「楽曲の魅力」、そしてショーンによる「音の良さ」が結ばれた作品と言えるだろう。
※ちなみにマスタリングはGreg Calbi御大なのでホントに鉄壁の布陣


こういう存在感、楽曲のスペクタクルを持つインディバンドが出てくるとやっぱり嬉しくて……新しい横綱の誕生を祝いたい。最終曲の「You Don't Have to Go」、ラスト2分ほどに響き渡る音の波は、このバンドのこれからを確信させるように、どこまでも広く、穏やかで感動的だ。更なる自信をつけて帰ってくるであろう次作では、歌詞やリズムの変化、勝ちパターン外の曲展開も楽しみにしたい。
Rating : 86/100 ★★★★☆

最高です


関連作

Alabama Shakes / Sound & Color(2015)
異常な音質というと自分はSteely Danの『Two Against Nature』が浮かぶのだけれど、そのクリアさを潔癖症からくる「滅菌処理」の賜物とするなら、録った空気[=アナログ]に得体のしれない何か[=デジタル]を纏わりつけたような『Sound & Color』は「培養処理」なんて領域に踏み込んだんだと思う。音響的モダンの更新作。

ほか
Shawn Everett - Wikipedia
Kurt Vileについて ~過去と今を結ぶ、USインディの理想像
Whitney / Light Upon the Lake (2016) 感想


補足:TWODの軌跡
折角の快作なのでもう少し話を続けて……ここで少し過去作を振り返ってみよう。そもそもTWODのブレイクは突然変異的だった。なんてったってデビュー作『Wagonwheel Blues』(2008)の一曲目はこんな具合だったし
どルーツ!声……誰………!

続く批評家筋に対してのブレイク作、2nd『Slave Ambient』(2011)でも、彼は自身の嗜好をそのまま鳴らしていた。(この辺はカートと好みがほぼ一致している→Kurt Vileについて ~過去と今を結ぶ、USインディの理想像
これはこれで超良いけども

この2作は素晴らしい内容だったが、ただ一点、「チャート上位に入るか」といえば、その可能性は(ほぼ)ない、良くも悪くもインディ然とした音楽性だった。このあたりは初期のThe Nationalに似たものを感じる(勝ちパターンに至る前、デビュー作で見ている景色も近い)。チャートなんて不愛想な尺度でいえば、同時期ミュージシャンの最高順位を伺うに、本来TWODもこの辺に落ち着くはずだったんじゃなかろうか。
ArtistAlbumUSUK
Real EstateAtlas#34#43
Sharon Van EttenAre We There#25--
Kurt Vileb'lieve I'm goin down...#40#25


憧れから一歩引いた、枠を超える一歩
しかしてTWODは、長年連れ添った彼女との別れ……あるいはカートのブレイク先行を受けてか、明確なスケールアップに動いた。今作に連なる前述の「勝ちパターン」を手にした代表曲、3rd『Lost in the Dream』の先行シングル「Red Eyes」の登場だ。歌いだしから世界が違う。
圧倒的覚醒感

ここでアダムは「距離の取り方」を変えたのだ。1st、2ndで明らかなアダムのルーツだが、3rdでは一直線にそこへ向かわず、距離を取ることで、全てが隣り合っている景色、アングルに立とうとした。この軌跡は、ひとまわり先輩であるDeath Cab For Cutie、SPOONらの、90年代オルタナへの憧憬を持ちつつ、その背を追うのでなく、少し角度――目線を変えて進んだことで、自分たちの道、年代へ踏み出したあの力強さと同じものだと思う。その結果が、今作のUS#10、UK#3という、「インディ」(大手Atlanticに移籍しているが、ここでは所属というより活動や創作姿勢)の枠を完全に越えた成功だ。

最後に、直近の全米TOP10入りバンドもいくつか並べてみよう。改めてネクストステージに入った事が分かる。TWODのこれからを楽しみに追っていきたい。
ArtistAlbumUSUK
TWODLost in the Dream#26#18
A Deeper Understanding#10#3
SPOONThey Want My Soul#4--
Hot Thoughts#17#76
Freet FoxesHelplessness Blues#4#2
Crack-Up#9#9
Bon IverBon Iver, Bon Iver#2#4
22, A Million#2#2
The NationalTrouble Will Find Me#3#3
Sleep Well Beast#2#1

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