WITHOUT SOUNDS

グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

Kurt Vile & Courtney Barnett / Lotta Sea Lice (2017) 感想~Rough、Laugh


このコンビの佇まい、良すぎる。

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
トラックリスト
01. Over Everything (Kurt Vile) – 6:19
02. Let It Go (Courtney Barnett) – 4:33
03. Fear Is Like a Forest (Jen Cloher) – 4:47
04. Outta the Woodwork (Barnett) – 6:21
05. Continental Breakfast (Vile) – 4:53
06. On Script (Barnett) – 3:59
07. Blue Cheese (Vile) – 4:37
08. Peepin' Tom (Vile) – 4:14
09. Untogether (Tanya Donelly) – 4:50

Total length : 44:33

一部音楽好きには今これ以上ない組み合わせのタッグが生まれました。「Kurt Vile(カート)」と「Courtney Barnett(コートニー)」、奇跡みたいな略称ですが、まずは簡単にお互いのキャリアを。
Kurt Vileについて ~過去と今を結ぶ、USインディの理想像
このセンスは、一体何なのか? 怠け者風味の新人リリシストが見せたシュールでむきだしな歌詞世界 - レビュー : CINRA.NET
  

ツアーポスターからして相性抜群のふたりが届けてくれたのが「Over Everything」。寝起き感あるグルーヴが熱を帯びていく様は、シーン云々の外野、単純に双方向のリスペクトから実現した幸福なコラボの賜物。key = D MajにいきなりEをぶつけてフックを形成するロックンロール的な曲作りの巧みさ。お互いの創作インスピレーション源を囁き(カートはボヤき)投げかけあう詩作は、当代きってのシンガーソングライターふたりの才能如実。豊かなコード進行をひたすら反復しながら歪んだエレキギターが軋むだけのソロをバンドが盛り立てるアウトロ(←最高)にガッツポーズ。更に、はにかみながらお互いのパートを口パクするMVは微笑ましさ全開と、えぇ、この一曲だけでこのタッグは大勝利です……[誰に?]

本作はUS #51、UK#11を記録しまして、元はEP程度の企画だったので全米成績は少し寂しいものの、UKからの注目(コートニー人気が高い)は熱いですね。


ロックのコラボって難しい?
一応ふたりとも「ロック」に括れると思うのですが、ことこの言葉が似合うミュージシャンは、有機的なコラボが生まれづらいイメージがあります。大体、片方がいつも通りの曲を作って、もう片方が遠慮がちにそこに加わって終了することが多いような(だからスプリット盤という発想はシックリくる)。その点、「ポップ」の語が似合うミュージシャンは、"自分"をうまくスパイスに換えて、多要素に混ざっていける印象です。David Byrneあたりですかね。

じゃあこの二人はどうだろうと。本作が有機的なコラボかといえば、〇△です。ボーカルの相性はバッチリで、デュエットとしては花丸。ただ、先述したような良くない意味でのロック的コラボに留まっており、楽曲に驚きはない(例えばコートニーがこの曲調を料理、カートがこう弾ける遊び心も聴いてみたかった)。曲の良さは間違いないものの、この二人なら通常運転の範囲でしょう。何より、時間の関係かお互いの手癖が目立ち(カートはフォークの、コートニーはブルージーな素養が出てて、その辺ファンとしては面白い)、録音も練られていない。どちらも直近作が素晴らしいので相対的に厳しめになるだけなんですが、本作は良くも悪くもラフな仕上がりとなっています。


Rough、Laugh
しかしてこれは良いアルバムです(アレ?)。何が良いかって、雰囲気です。これは二人の手癖、つまりルーツ色が全体を覆ったことによる統一感も大きいと思うのですが、このアルバムを聴いていると、二人が笑いあって演奏している素敵な光景が浮かび上がるんですよね。そこが何より本作の魅力で。帯の言葉を借りましょう。

「これは二人の素晴らしいシンガーソングライターが心底音楽を楽しむ姿を映したドキュメントであり、それこそが本作をより特別なものとしている。」

この感想に同感で、こんな幸せな――音的な多幸感とは違う、もっと単純に"日常の微笑ましさ"のような――アルバムはそうないですね。Mikikiでは「間違いなくターニング・ポイントとして語り継がれる」なんて飛ばした書き方をしていますが、本作はそんな大袈裟な代物でなく、それでいてもっと大事なものの詰まった一作に仕上がったんじゃないかと。年間ベストの括りより、日常、休日みたいな語が似合う好盤です。
Rating : 72 / 100  ★★★★



関連作
最後に関連作を紹介します。「Over Everything」が好きすぎるんで、同じくユルくてダルくてカントリー(or ソフトサイケ)気味の微笑ましいバンドサウンド……グルーヴというよりは、もう少し砕いて「ノリ」とでも言いたいやつ、思い浮かぶのはこの二人。


・R STEVIE MOORE / Sheetrock (1978)
1960年代後半からひたすら宅録で地味に楽曲を発表し続けて40年(!)、発表作は400オーバー(!?)と噂されるDIY界のカルト・レジェンド、滅茶苦茶盛ればある意味"全USインディの始祖"、スティーヴィー・ムーア御大です。上の動画、「irony」がソフトサイケ版でドンピシャだと思うんですよね…。この曲が収録されているのは『Sheetrock』ですが、今年正規リリースされた『Make It Be』、この新作がまた良いんです。あわせてどうぞ。
 

・Mac Demarco / THIS OLD DOG (2017)
Wooden Wandでは「ギター録音」で挙げましたが、グルーヴも魅力の一枚です。「Kurt Vile & Courtney Barnett」と「Mac Demarco」の新譜を回せば、今年の天気いい休日の昼下がりはオールライトですよ。更新遅すぎてもう冬まっさかりになっちまっただが……
Mac DeMarco // One Another (Official Video)
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