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グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

The National / Sleep Well Beast (2017) 感想 ~リズムの再構築、ポピュラーソング



太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック

TrackList
01. Nobody Else Will Be There 4:39
02. Day I Die 4:31
03. Walk It Back 5:59
04. The System Only Dreams in Total Darkness 3:56
05. Born to Beg 4:22
06. Turtleneck 3:00
07. Empire Line 5:23
08. I'll Still Destroy You 5:15
09. Guilty Party 5:38
10. Carin at the Liquor Store 3:33
11. Dark Side of the Gym 4:50
12. Sleep Well Beast 6:31

Total length : 57:32

USインディ最大御所ポジになった7th。そのブランクが待望でしかなかったことを証明するUS#2、UK#1への乾杯から始めましょう。ポスト・パンク、フォーク、アメリカーナ、クラシックといった多彩な影響を混ぜ込み、BSSや一部ポスト・ロック勢に通じるダイナミックなリズム、それに対して綿織物のように繊細なトーン、重厚なバックサウンドに、マットのバリトン・ボイス(と狂気的な叫び)を核とする作風で、世界から賞賛を集める彼ら。バラク・オバマが大統領選挙キャンペーンヴィデオで彼らの楽曲「Fake Empire」を使用するなど、その存在感、そしてブレない音楽性は、ある意味で一時期のR.E.M.に連なるものを感じさせます(名曲が出来たら積極的にリサイクルしてくる辺りも似てる)。そして本作『Sleep Well Beast』は、おそらくキャリア中最もこのバンドの魅力が伝わりやすい一枚になっています。初めて聴く方もぜひここからどうでしょう。


ドラムの再構築、ポピュラーソングへ
今作はエレクトロニカというか、90s後半くらいの「打ち込み」も随所に取り入れていますが、最大のポイントは「ドラムの再構築」じゃないでしょうか。『Boxer』以降の彼らにとって、「キックとスネアの区別がつかない」迫力を持ったドラムは、一種のトレードマークでした。逆にアコースティックな楽曲ではドラムを完全に裏に回す、つまり大袈裟に書けば「0か100」が基本パターンだった。しかし今作は、「1~50」くらいのリズムアプローチが一気に豊かになった。その結果、まず100でない時の「歌の余韻」が際立っています。ピアノの存在感も強く、ロックというか50s-70sのポピュラーソングをモダンに鳴らしたような感覚があって、特にtr7 - 11の流れはハイライトに感じました。それによって100の時、「The National Classicsなリズムが一際感動的になった」(#2, 4, 8後半!)。パターンが完成しすぎて聴き疲れもする過去3作に対し、本作はこの緩急で60分が全く苦になりません。

個人的には特に「Guilty Party」ですね……「I say your name, I say I'm sorry」のやるせない名リリックもさることながら、Radiohead「Weired Fish」ばりに"追い込まれて"いく間奏の感情表現には息をのみます(こっちは誘惑じゃなく自己嫌悪ですが)。今までのスネアだとこのギターアプローチは成り立たなかった。前作の名曲「I Need My Girl」も、本作を踏まえるとリズムについては習作だったかもと感じるくらいです。本作を聴いて「もっとドラムを!」と思ったら『Boxer』、「もっと高揚を!」と感じたら『High Violet』に進むのが良いと思います。「本作みたいなのを!」ってなったら何になるだろう……自分も知りたいです(コメント募集)。


個人と外
今回の歌詞テーマは「家庭の崩壊」、これだけ見ると個人の話ですが、このモチーフをそのまま世界情勢、アメリカの現状に置き換えてもそう遠くはないでしょう。本作における「you」は、良くも悪くもかけがえのない、そして問題を抱えた存在として示されています。「I」も同様に問題を抱えているのがマットらしい所で、この二者の関係は、主人公から愛するひとへの心情、あるいはマット自身から聴き手へのメッセージ、そして一部楽曲では権力者から 大衆とみても成立する。

We have so much to cover and I don't know what I'm expecting
You keep saying so many things that I wish you won't
Can't you find a way? Can't you find a way?
You are in this too
Can't you find a way? (Empire Line)


改めて聴いても、全曲ちゃんと記憶にあり、かつ聴くたびに発見があって、THE BLUE NILEの諸作のようにコードチェンジひとつとっても必然を感じさせる、感情に訴えてくる。これは自分の中で特別な一枚だぞと。そしてきっと、少なくない人にとってもそうなる作品じゃないかと思いました。そんな、個人の隣に立つような存在であると同時に、外の世界に目を向け、声を連ねるアルバムとしても成立しているその懐の広さ。『Sleep Well Beast』は彼らの最高傑作(のひとつ)で、自分が聴いた2017年のベスト・アルバムです。
Rating : 92 / 100 ★★★★★


名曲。
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