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グデグデと夜更かしがちな後追い探訪録

CAR SEAT HEADREST / Twin Fantasy (2018) 感想 ~Only In Dreamsを現実にして

Twin Fantasy [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (OLE13472)
Release:February 2018 (旧盤は2011年)
Country:US, ワシントン, シアトル
Label:Matador
Style:Indie Rock, Guitar Rock, Emo, Lo-Fi Pop
Related:They Might Be Giants、Weezer, ナード系エモ勢

ナイスアートワーク。この、「二人で一つ」という在り方がアルバムのキーワードとなった。

太字(良い)>黒 赤太字は名曲 、斜体はリードトラック、下線は個人的なベストトラック
Track Listing
01. My Boy (Twin Fantasy)  2:52
02. Beach Life-in-Death  13:19
03. Stop Smoking (We Love You)  1:29
04. Sober to Death  5:04
05. Nervous Young Inhumans  5:25
06. Bodys  6:46
07. Cute Thing  5:39
08. High to Death  7:39
09. Famous Prophets (Stars)  16:10
10. Twin Fantasy (Those Boys)  6:54

Total length: 1:11:16

……「1stが大ヒットせず、2ndで『Tired of Sex』のタイトルにたどり着けなかったリヴァース・クオモ(Weezer.Vo)」、「10曲中8曲が『Only In Dreams』相当の過剰なギターロック・アルバム」、「圧倒的な歌唱力や時代を切り開くような独創性はなく、ポップスターとなる器じゃないが、熱量(と面倒くささ)だけはPrinceに迫れる人物」、とか。


カー・シート・ヘッドレストとは
Car Seat Headrest(以下CSH)。この、何だか微妙に冴えないバンド名のフロントマンが、シアトルの若者、いかにもナード的な風貌をした、1992年生まれのWill Toledoだ。10代後半からひたすら宅録曲をBandcampに発表し続け(その結果本作は早11作目)、一部の熱狂的支持をうけインディの超名門Matadorへの切符を手にし、念願だった自身の「バンド」を確立。そこからの足取りは力強く、2015年『Teens of Style』で頭角を現し、2016年『Teens of Denial』で主要音楽誌の年間ベストに軒並みランクイン、特にRolling Stone誌は4位に選出(当ブログ2016年間ベスト1位)。と、新鋭インディバンドとして俄かに確かに注目を集めている存在だ。まぁどんな感じかはアーティスト画像を見ると色々察せると思う(たぶん言うまでもないが、Will Toledoは一番左の眼鏡である)
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Car Seat Headrest better with more mileage | Technique


フォロワー、とは少し違う
その音楽性はいわゆる懐かしの「ギターロック」、おおむね80s - 90sオルタナの範疇にあるものだ。だけども、じゃあWill Toledoが「懐古勢」「フォロワー」かというと、それは少しだけ違うと思っている。というのも、このひとは「名曲のイントロをもじってフフフ皆も好きでしょ」みたいな感じじゃなく(それも良さみがあるけど)、「それっぽいだけの平々凡々」でもなく、まず「言いたいことが死ぬほどある」、そこで「フォーマットを借りた」──そのフォーマットが幸か不幸か、今の時代にあって「ラップ」でなく「ギターロック」だった――タイプのひとだから(ここで興味を失うリスナーもいるとは思うが)。

だから彼の楽曲は、リスペクトより自我が先んずるというか、宅録出らしくファニーなドラム音にこだわったり、2~4分のポップソング尺を無視して6分8分果ては15分と超長尺も結んでくる。そしてそれは、プログレ展開やSY的インプロに突入するからではなく、単に「歌詞展開の都合」と「自分が思いついたアイデアをすべて詰めた結果」によるもの。そう、このひと滅茶苦茶面倒くさいのだ!しかしポップである以上、当然その面倒くささこそが魅力であって、それによってCSHはフォロワー止まりを突き抜けた。



Weezer的ダイナミクス
その面倒くささ(魅力)は、今回更に突き詰められている。ホーンやオルガンソロもあり意外と幅広かった前作とは違い、ストレートにバンドサウンド一本な本作。そもそもコレは、19歳のWill Toledoが自主制作で発表し、かのBrian Enoから「“音の失敗作”」とコメントをうけた(なんて羨ましい)未熟な作品を、満足いく制作環境を手にした彼が全編再構成・再録したものだが、もうこの時点で未練がましい。2曲目から歌詞はPart1、2、3に分けられ尺は13分を越え、多量のモノローグを含んだ5~7分台の楽曲が延々続く……歌詞はこんな具合だ。

「僕は魂の抜け殻のようなもの 人間らしくいることもできない」
――BEACH LIFE -IN- DEATH

「そんなことが言いたかったんじゃない 僕が伝えたかったのは 何かを伝えるのはウンザリだということ、君を抱きしめたいってこと」
――BODYS

「何もうまくいかない 誰にとってもそう 優れた物語とはひどい人生のこと」
――SOBER TO DEATH


この辺で、最初に「リヴァース・クモオ」の名を出した理由が良くも悪くも伝わるかと思う。しかして本作は、そうした堂々巡りの歌詞たちをバンド演奏のカタルシスで幾度となくブッチ切ってしまう。それこそ自分が思うCSH、あるいはロックバンド最大の魅力。本作は本当に数多くの「突き抜けるあの感じ」がおさめられている。それはBeach Life-in-Deathにおける「I don't want to go insane」のシャウト、Bodysの「When we dance」の一声に続く解放感、Cute Thingで聴けるファズギターソロだったりするが、"全編「Only In Dreams」"とうたえそうな過剰な曲展開のダイナミクスは、多くの人をウンザリさせ、少なくない人の心を揺さぶるはずだ。



旧盤と再録盤によるTwin Fantasy
そんな本作の核は最終二曲にある。ベストトラックだろう「Famous Prophets」は、例によって3部構成16分のスローバラード。3:40からのリフレイン、10:45あたりの裏声、二分間の轟音……と曲中3回は"いてもたってもいられなくなる"タイプの名曲だが、この曲は再録盤と旧盤で歌詞や引用が異なり、そこに、再録を果たした現在の自分(25歳)から、旧盤を作成した過去の自分(19歳)に向けてのメッセージがある。

解説より、旧盤がモノローグで引用したのは旧約聖書「列王記」、再録盤は新約聖書「愛の賛歌」である。解釈の議論は置いておくとして、重要なのは、再録盤が深い愛をもって「この二人は今も一緒にいる」という文言を加えたことだ。そして最終の表題曲では、旧盤で「これはWillがあきらめた曲の一部です」と語られていた一節が、再録盤にて「この曲は、私とあなたのバージョンです。契約が締結され、名前が変更されました」と返される。さて、今回のパッケージングにあたってつけられた、旧盤のサブタイトルは「Mirror to Mirror」、再録盤は「Face to Face」である。

某映画よろしくのひとりタイムフライヤー、完全に自作自演の後出しジャンケン、だがここまで見事な自己完結はそうそうない。『Twin Fantasy』は、6年の時をへてまさしくツインとなり、完成した。アートワークを見てほしい。



Only In Dreams?
一曲目「My Boy (Twin Fantasy)」の「そのうちいつか孤独じゃなくなるはず」に始まり、ひたすら激情と感傷を煽るために鳴り続けていたバンドサウンドが、最終曲「Twin Fantasy (Those Boys)」の最終ラインで、"巡り合えた彼(ら)"に対する祝福の音に鳴り変わる瞬間が本当に良い。

それは例えば、Prince『Sing O' The Times』――音はポップ~ファンク~アバンギャルドまで、歌詞は社会風刺~学校の一幕~俗世間なラブソングまで繋いだ、時代の名盤――において、古典的なソウル・バラードのフォーマット、からこの上なく深い(面倒くさい)自身の愛を綴った「Adore」が最も奇跡的な時間を宿しているのと似た理由じゃないかと思う。ここにあるのは形式というよりも、個人の熱量の多寡が生み出した全てじゃないか。


機会があれば、旧盤を是非聴いてみてほしい。たぶんコレを評価する気にはならないだろう。そんな、19歳の彼が夢に描き、本人以外の誰にも伝わらないような雑音で紡いだ「自分の頭の中にだけある傑作」は、時をへた2018年、見事に現実のものとして鳴り代えされた。そう、それは、"夢の中"だけのものじゃなかったのだ。Will Toledoはケリをつけたのである。
Rating : 90 / 100 ★★★★★
前作を93として。



最後に:
このアルバム、松林弘樹さんによる国内盤の解説が素晴らしくて。この記事は参考にならん直情系直下縦型の広がりない内容でしたが、解説ではサミュエル・テイラー、ヒッチコック、レナード・コーエンやジョニ・ミッチェルの引用、LCD Soundsystem……などなど、本作にかかわる膨大な参照キーワードがたくさんあり。対訳をふまえる、また、本作の場合は旧盤と再録盤を「1つ」で持つ意味合いも含め、購入の際はぜひDLでなく国内盤をオススメしたいです。
Twin Fantasy [帯解説・歌詞対訳 / 国内仕様輸入盤 / 2CD] (OLE13472) | Car Seat Headrest, カー・シート・ヘッドレスト | ロック | 音楽

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